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キャリアハイを記録した西川愛也が語る現在と今後。

厳しいシーズンとなった今季のライオンズ、特に打撃力の低迷が目立ち、チーム打率がパ・リーグの平均を下回るなど、得点力の向上が課題となった1年でした。そうしたなかでも徐々に頭角を現してきた選手といえば、来シーズンで8年目を迎える西川愛也です。
大半の成績が昨年までを上回り、来季に期待を持たせてくれる選手のひとりとなりました。

過去にはNPBワーストの62打席無安打記録を残した西川が、どのようにしてここまで這いあがってきたのか、これまで語られていないある試合についても触れます。


輝かしい経歴から一転

西川は小学校2年生から野球を始め、花咲徳栄高校では春夏合わせて甲子園に4度出場し、3年夏にはチームを初の全国優勝に導きました。

2017年ドラフト2位でライオンズに入団しますが、高校2年の春に大胸筋断裂のけがを負った影響で、送球に課題があったため、1年目のほとんどはリハビリと並行して、試合ではDHでの出場が続きました。
3年目の2020年には内野手から外野手に転向しますが、けがをかばって他の箇所が炎症を起こすという負のループを繰り返します。
そうしたなかでも8月に一軍での初出場を果たし、2打席目にはヒットを記録。初打点も記録しました。甲子園出場経験がある西川ですら、一軍の舞台での声援には驚きを隠せなかったといいます。

「職業としての野球となるとまた違った緊張感がありましたね。ピリピリした雰囲気だったのを覚えています」。

しかしそれ以降は、なかなかヒットが打てず、自宅への帰り道では悔し泣きの日々。「ファームでは打てるのになんで…」と苦しい日が続きます。いろいろと試行錯誤や検討を繰り返す日々が続くなか、初本塁打を記録したのは初出場から3年が経った2023年。入団から5年の月日が経っていました。

その西川が今季は6本の本塁打を記録し、キャリアハイの70安打を記録(10月1日(火)北海道日本ハムファイターズ戦終了時点)。その理由を「打席に慣れてきたというか、緊張しなくなりました」と話します。
なんとも新人選手ような発言ですが、きっかけとなった打席があったと言います。

完璧な1本が西川を変える

「今年の7月に東京ドームで行われた試合で、有原さん(福岡ソフトバンクホークス)から2ランホームラン打ったんですけど、そこから変わりました」。

その日、7回まで好投を続けていた有原投手は、特にチェンジアップが良い日でした。
西川は打席に入る前にコーチから「チェンジアップ1本でいけるか」と言われ、即答。
「何も考えず“チェンジアップが来たらバットを振る”ことだけに集中しました。フォームもバットのスイング軌道も何も意識せず、思い切りバットを振った結果でしたが、あとで動画を見返したら過去最高のパフォーマンスでした」と振り返る西川。タイミング、スイング軌道、重心移動や体のひねりまで、すべてにおいて理想とするフォームで打てた1発でした。

ホームランは結果論かもしれませんが、これまでは打席に立つ際、“対自分”だったことに気が付いたと言います。
打者の相手は投手で、自分ではありません。打席に立ったとき“構えはできているか”、“スイングはここを気を付けて”と、自分のことばかり考え、投手と対戦できていないことに気が付きました。

「それまで怖さしかなかったので、あの打席は人生を変えたと言ってもおかしくないと思います」。

それ以降の西川は、投手と勝負できる打席が増え、自信をつけたことによる気持ちの余裕で、駆け引きを楽しむことすらできるようになったと言います。

野球は取り戻せるスポーツ

続いて、守備について。
外野手のレギュラーが白紙で始まった今季ですが、金子侑司選手の引退試合以外、西川が出場した試合では必ずセンターでした。

「センターって、打球が正面から来るから意外と難しいんですよ」と笑ってみせますが、それでもいくつものファインプレーが生まれたことには理由があります。

「ライトやレフトからの声かけが本当に助かりました。横から打球を見ている2人が言ってくれるので安心して飛び込んでいけました」というチームワークの良さ。
そして新しい練習を取り入れたのも要因のようです。

「動画で見つけたのですが、空間認識の練習を続けています。打撃練習でチームメートが打った瞬間に目を切って、落下地点をみる、体は動かさず、視線だけなのですが、その練習を繰り返しています。本当にゲーム感覚ですけどね」。

ボールが落ちる地点を予測する力がついたことで、守備における自信をより一層高め、いくつものファインプレーで投手を助け、ファンを喜ばせてくれました。

来季8年目を迎え

年齢的に中堅に差し掛かり、後輩も増えてきました。
自覚も芽生え、出場した試合で負けたときには責任感を今まで以上に強く感じるようになったと言います。

「特に前半は投手ががんばってくれていたのに打てなくて負けがついてしまった試合が多くありました。打てない分、守備で助けられたらと思っていましたが、それにも満足していません。記録上は失策ゼロですが、見えないエラーがたくさんあったんです。愛斗さん(現:千葉ロッテマリーンズ)が、野手は投手の人生を背負っているって言っていましたが、本当にそのとおり。これまではカッコいい言葉だなと思っていましたが、今年は特に自分事として、肌で感じた1年でした」と精神的にも成長した言葉を発しました。

試合後には打撃マシンを相手に打ち込むのを日課にしている西川ですが、夏に打撃が低迷した際には、周囲に相談することも。

「みんなで食事に行ったときに相談してたんですけど、一緒にいた今井さんが体の使い方に詳しくて、参考にさせていただきました。それから体に関する本も読みながら、今のフォームに辿り着いたんです。これまでの力強いスイングからインパクトのときに少し力を抜くこと、そして軸足を右に変えました。」

シーズン中にフォームを変えることは大きな決断が必要ですが、それ以上になんとかしたい、なんとかしなければならないという気持ちが西川を動かしました。

そして西川が今思うこと、それは「ゴールデングラブ賞を獲りたい」。
これまで大きな目標を持ってこなかった西川が、掲げた一つのターゲットです。

今季得た自信が支えになり、近いうちに達成してくれると信じています。

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