プロ野球での経験、大学院での学び、そして指導者としての抱負
11月22日のnoteでは、新任の辻竜太郎コーチをご紹介しました。今回はその第二弾、大引啓次コーチについてご紹介します。
日本ではセ・パで3球団、引退後はアメリカでの学びを経て、来季からライオンズでコーチを務めることになりました。ライオンズの在籍経験はありませんが、多様な背景をもつ選手たちとの関わりで得た新しい視点を、ライオンズでの指導にどう還元し、チームを強くしていくのか、話を聞きました。
来シーズンから、内野守備・走塁コーチを務める大引啓次コーチは、これまでライオンズに在籍した経験がありません。ライオンズからコーチのオファーがあったときの心境を「よく自分を見つけたなと。本当にびっくりしましたし、すごくうれしかったです」と話します。
大学院での学びとコーチングへの応用
来シーズンから、内野守備・走塁コーチを務める大引啓次コーチは、これまでライオンズに在籍した経験がありません。ライオンズからコーチのオファーがあったときの心境を「よく自分を見つけたなと。本当にびっくりしましたし、すごくうれしかったです」と話します。
大阪市住吉区出身。法政大学から2006年の大学生・社会人ドラフト3巡目でオリックス・バファローズに入団しました。2012年オフにトレードで日本ハムファイターズに移籍。2014年オフにはFAで東京ヤクルトスワローズに移籍し、2019年に現役を引退。セ・パ両リーグ、3球団でプレーしました。
引退後は指導者を志し、勉強のため2020年にアメリカに渡りましたが、コロナ禍のためわずか1か月間の滞在に終わりました。
「2020年から大学院に行こうと思ったんですけど、引退を決めたのが遅かったので、入学手続きの期間が終わってしまっていて。時間ができたので、大リーグのキャンプやマイナーリーグ、選手の育成方法などを視察したかったのですが、残念でした。短い期間でしたが、アメリカの指導者の皆さんがすごく謙虚で驚きました。こちらが聞きに行っているのに、向こうからたくさん質問をされるんです。それに感銘を受けて、大学院でコーチングを学ぼうと思いました」
翌2021年に日本体育大学大学院に入学。コーチングを学びながら、日本体育大学硬式野球部で臨時コーチも務めました。実際に学生を指導しながら、疑問に思ったことを大学院の授業で議論して発表するなど、充実した時間を過ごしました。「ようやくやっていけるかな」と自信がついてきたころ、ライオンズからコーチ就任の話が舞い込みました。
採用を担当した広池球団本部長(※)は「現役時代には1000安打を達成し、守備職人とも言われた選手の場合、引退後はそのままコーチなることが多いのですが、アマチュアの指導をしながら勉強を始めたところが魅力的でした。これまでの珍しいキャリアから、新たな気づきや学びを選手たちに与えてくれると感じました」と話します。野球選手としての実績はもちろん、学ぶ姿勢に加えて、現役時代の闘志あふれる人間性も評価したといいます。「現役時代はカッと熱くなる、感情を表に出すイメージを持っていたのですが、学生野球の解説を聞いたとき、すごく真面目な語り口調で、紳士なイメージを持ちました。熱い闘志を心にしまって、そういう対応もできるところに、良い意味で期待を裏切られましたね」。
ライオンズの現状と課題
大引コーチは秋季キャンプからチームに合流。「指導というよりは、来年に向けての準備に充てさせてもらいました」と言いますが、いろいろなものを吸収したいと、目を輝かせながらひたむきに取り組んでいる選手たちの姿を見て「まだまだ伸びるんじゃないか」と期待感を持ったといいます。自身が指導を担当する守備、走塁については、次のように考えています。
「守備で負けたという試合はあまりないと思いますので、技術力アップを図るとともに最低限、今年の守備を目指してもらいたいなと思っています。練習だったらできることが、試合になるとできないということもあります。経験を重ねることが大事です。幸い、今年はいろいろな選手がチャンスを与えてもらって、一軍での経験を積んだと思うので、それを無駄にせず、来シーズンにつなげてもらいたいと思います」
一方、走塁については「意識が低いとは思わないが、さらに上を目指してほしい」と話します。
「『打てなかったから負けた』と思うんじゃなくて、走塁で一つ先の塁を狙う意識があれば、もう1勝できたかもしれない。ランナーが相手ピッチャーにプレッシャーをかけられれば、球が甘いコースにいくかもしれない。来シーズン、プレッシャーをかけられなかったら、いいピッチングをされてバッターが簡単に打ち取られるかもしれない。そうならないようにするのが、私の仕事だと思っています」
コーチとしての役割と抱負
今年のライオンズは厳しい結果に終わりました。「選手一人ひとりが自分には関係ないと思わず、なぜこのような結果になったのか、準備、戦う姿勢、勝負の厳しさをしっかり考えてほしい」とも話します。
「いまは本当に競争です。そういった意味では、少し『和気あいあいとしすぎるのかな』と思うところもありました。選手間の年齢や監督・コーチとの距離感、さらにスタッフの垣根を越えて非常に明るい雰囲気を感じられたのはうれしく感じました。練習している間も殺伐とした雰囲気もなく野球に打ち込める環境は申し分ないと思います。その一方で、今シーズンの敗戦を他人事にせず当事者意識をもって来シーズンに繋げてほしいです。この悔しいと思う気持ちの持久力が、来シーズンの成績に反映してくるると思います。西口監督が明言しているように、ショートのポジション以外は空位の状態です。特に若い選手には、この千載一遇のチャンスを是非とも掴んでほしいです」と期待を込めます。
続けて、自身が現役のときのライオンズはとにかく強かったと話す大引コーチ。「主力となるレギュラー陣がしっかり活躍し、タイトル争いをしていたからだと思います。また脇をかためる選手たちも与えられた仕事を全うしていて、バランスの良いチームだったと記憶しています。現在はそういった屋台骨を支えてくれる選手の出現が必要だと感じますね。レギュラーになれば注目も脚光も浴びることができます。言い換えれば、試合の勝敗を大きく左右し、チームに影響力を与える存在でもあります。強いライオンズの復活のために、そんな選手がひとりでも多く名乗り出てきてほしいです」。
2月のキャンプインが待ち遠しいと話す大引コーチ。新たな風を吹き込み、チーム再建に力を尽くします。