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「ライオンズは今すごくやりがいのあるチーム」      新任コーチ・仁志敏久が目指す理想のコーチ像とは

ライオンズはチーム再建に向け、2024年10月、来季の新しいコーチ陣を発表しました。来シーズンから野手チーフ兼打撃コーチに就任する仁志敏久コーチは、先日ご紹介した大引啓次内野守備・走塁コーチと同様、これまでライオンズに在籍した経験はありません。

ライオンズからコーチ就任の話があったときのことを「ちょっとびっくりですね。全然関係なかった僕をよく思いついたなと、驚きました」と振り返ります。

現役引退後に筑波大学大学院で体育学を学びながら、侍ジャパンでもコーチを務めた仁志コーチ。どんな指導でライオンズを強くしてくれるのか、その素顔に迫ります。


コーチとしての学習と成長

仁志コーチは茨城県出身。常総学院高校から早稲田大学に進み、社会人野球の日本生命を経て1995年ドラフト2位(逆指名)で読売ジャイアンツに入団。2006年オフにトレードで横浜ベイスターズに移籍し、2010年には米独立リーグでプレー、同年に現役を引退しました。

2014年からは筑波大学大学院人間総合科学研究科でバイオメカニクス、運動学、トレーニング学、スポーツ法学など、野球の指導や研究にまつわるさまざまな分野を学び、侍ジャパンのコーチや侍ジャパンU-12監督を歴任。2021年から3年間は、横浜DeNAベイスターズの二軍監督を務めました。

引退後に大学院に進むことを決めたのは、将来の指導において、根拠を持って指導したかったから。昔でいう根性論や自分の経験則に基づくものではなく、例えばデータなどを活用して、よりよい指導が必要だと感じたといいます。もちろん、自身のこれまでの経験は指導するための引き出しのひとつになることは間違いないので、選手から聞かれれば応えるつもりだと話します。

大学院での授業をきっかけに、指導者になるためには心理学なども学ぶ必要があると知り、今も勉強を続けています。「一番勉強したのは心理学ですね。興味本位で脳科学みたいなものを読み漁ったこともありますけど、やればやるほど、勉強しなければいけないことがたくさんあると思い知らされます」。本棚に読み終わった本が並ぶと「これだけやった」と満足感が得られると、勉強熱心な一面をのぞかせます。

横浜DeNAベイスターズの二軍監督に就任したのは現役引退から11年目のシーズンでしたが「いいタイミングで話をもらい、いいタイミングで退団することができた」と話します。

「引退後は、ある程度納得したタイミングでユニフォームをまた着ようと思っていました。そのために大学院にも通いましたし、11年というと遅いと感じるかもしれませんが、私のなかでは、しっかり準備ができたという感覚です。その後、3年間二軍監督を務めましたがそれ以上、同じことを4 年も 5 年もやっても新しいものが自分にインプットされることもないし、選手たちにもフレッシュな知識を提供できないと思ったので、退団することにしました。自分にとっても、選手にとっても惰性になってしまう、それはよくないと思うので」。

選手の未開拓な可能性に期待を寄せる

そんな仁志コーチは2024年の11月、ライオンズの秋季キャンプからチームに合流。選手と会話を重ね、やりがいと楽しさを感じる充実した時間を過ごしました。

「伝えたいことは伝えられているかなと思っています。これからじっくり時間をかけて、もっといろいろなことを話したいですね」。

さらに選手とコミュニケーションを取っていきたいと話す仁志コーチ。自身のコーチとしての役割は「うまくいく可能性が高いものを提供し、選手のモチベーションを高めていくこと」だと考えています。

「選手自身が、自分自身をまだまだ深堀りできる。もっと掘り下げられればいいかなと思います。資質みたいなものはどうにもならないんですけど、今まで『難しいだろうな』と思っていた選手がスター選手になったケースもたくさんあるので、何かきっかけがあると本当にわからない。選手自身の中で『ぱっ』と偶然見つかることもあると思います。そのきっかけになる、限りなく可能性が高いものを提供したいと思っています」。

そして、ライオンズはいま、すごくやりがいのある状況だと続けます。

「ライオンズの選手たちは未開拓で、変な癖がついていないので、いろいろやりようがあるし、何色にも染まることができると思います。全くホームランを打たなかった選手がすごいホームランを打つようになるかもしれないし、突然、首位打者をとるような選手が現れるかもしれない。どう変化していくのかが楽しみです」。

そんな仁志コーチの理想のコーチ像は、『選手を理解し、選手から信頼してもらえるコーチ』だそうです。

「自分が現役だったときに信頼していたコーチは、いつも自分を見てくれていた。選手が『見てくれているな』と感じるコーチングをしたいですね。選手もいろいろ思うところはあると思う。コーチから一方的な会話になりがちですが、選手たちの話の後に僕の話があればいい。どんどん聞いてきてほしいですし、そういう環境を作っていきたいです」と話す仁志コーチ。

静かなる情熱、仁志コーチと西口監督の挑戦

ここまで指導に対する仁志コーチの考えや思いを話してもらいましたが、今回の就任にあたっては、こんな西口監督との裏話もありました。

「仁志さんは昔から知っているんだよね。子どもが学校で同じクラスで、授業参観なんかは一緒だったりして。だから『改めまして』みたいな感じはないかな」と話す西口文也監督。長く家族ぐるみの付き合いがあるといいます。

「仁志さんとは、お互いがファーム監督時代によく話をしていたけれど、指揮よりも指導をしたいと言っていたのが印象に残ってて、今回、広池球団本部長とも相談し、声をかけたというのもありますね」。

広池球団本部長からは「打撃だけではなく、守備も含めて広く指導をしたいと仁志さんの口から聞きました。あれだけ実績がありながら、自ら学校に学びに行った方なので、そういった面も含めて、ライオンズの選手指導に適任だと感じました」と振り返ります。

仁志コーチについて、現役時代は寡黙なイメージでしたが、会ってみると『現代の職人』という印象を持ったといいます。
「引き出しが多く、観察力を持っていますね。気になる選手にはすぐに声掛けに行きますし、静かに語るところも説得力が増しているように感じます。野球の技術に関して、選手とどんどん会話して欲しいと思っています」と期待を寄せます。

西口監督も仁志コーチも、互いに口数は多くないですが、人としても野球人としても、本音を理解し合っているふたりが、ここからチームの立て直しをはかります。

本年は、西武ライオンズ公式noteをご覧いただきありがとうございました。
良いお年をお迎えください。