新人王・武内夏暉 たくさんの人に支えられた野球人生
11月26日に行われた「NPB AWARDS 2024 supported by リポビタンD」で、武内夏暉投手がパ・リーグ最優秀新人賞に選ばれました。充実の1年を送った武内投手が、プロ野球選手が夢だったこどもの頃の出来事や、1年目のシーズンを支えてくれた人、またこれからプロの世界でどんなキャリアを描いていくのか、今後の目標を語ります。
家族が野球好きだったこともあり、小さい頃からよく試合を見ており、野球が身近な存在でした。周りに野球をやっている友だちが少なく、鬼ごっこなどをして遊んでいましたが、家に帰ってからは、父親とキャッチボールをしていたそうです。
小学校3年生の時に地元のチームで野球を始め、その時から夢はプロ野球選手になることでした。小学校の卒業文集にも、将来の夢は「プロ野球選手」と書いていました。
「野球漬けのこども時代でした」と当時を振り返りますが、左肘のけがをして中学2年生の時に手術を経験。しばらく野球から離れる日々を過ごしました。
「今までの野球人生のなかで、あれが一番きつかったですね。もう野球ができないんじゃないかと、とても落ち込みました。家族やチームメート、担任の先生にも病院にお見舞いに来てくれて励ましてくれました。本当にみんな優しく、心が救われました」
けがを乗り越えることができたこともあり、思うように投げられない時期もありましたが、野球を辞めようと思ったことは一度もないと言います。
本格的にプロを意識し始めたのは、数多くのプロ野球選手を輩出している國學院大学に進学が決まった時でした。大学では3年時の秋のリーグ戦でMVPを受賞、4年時には大学日本代表にも選出されるなど着実に成長を遂げ、2023年ドラフト1位でライオンズに入団。こどもの頃からの夢を叶えました。
そして1年目の今年、10勝6敗、防御率2.17の成績でパ・リーグ最優秀新人賞を受賞。
バッテリーを組んだ炭谷銀仁朗選手については「自分から相談するというよりは、炭谷さんから声をかけてくれるので、何でも話していました。今までにない配球もありましたが、炭谷さんを信じて勇気をもって投げられるようになり、掴めるものが出てきました」と感謝します。
もう一人、武内投手を支えた人がいます。人財開発担当の上原厚治郎です。
人財開発とは、若手選手の「主体的な行動力」と「言語化能力」を伸ばすために設けられた役割の組織で、技術的な指導ではなく、実力を発揮するための考え方や、思考の幅を広げる機会や手法の知的トレーニングなどを行っています。
武内投手は1年間、上原と面談を重ね、試合の振り返りを行ってきました。
「良かったこと、悪かったことを全部出して、次はどうしようかと話をしてきました。しっかり考えを整理して、次の試合につなげることができました。弱音を吐くこともありましたが、上原さんも同じピッチャーとして共感してもらえる部分があり、とても心強かったです。上原さんには何でも話せる、本当にいい相談相手です。大先輩ですが(笑)」
一方の上原は「投球動作やリカバリーを意識した体のほぐし方など、入団当初は抽象的な表現だった武内投手の発言が、徐々に具体的な言葉になっていると変化を感じられるようになった」と、武内投手の成長を感じたといいます。また、1年目から好成績を残せた理由を「練習中でも試合中でも、投球フォームに違和感を覚えると、どの部分がよくないのかをすぐに把握して、修正できたからではないか」とも話します。
周りにも支えられ10勝を挙げた武内投手ですが、夏場は調子を落としました。「『実は、まだ8月か』と毎日が長く感じてたんですよ。暑さで体力が落ち、疲れが出てくるとフォームが変わってしまうので。そのずれた時にどう戻すかが大事だと思っています」。
秋季キャンプでは体力強化に取り組みました。来季は1年間離脱することなくローテーションを回ることを目標に掲げています。また日本代表への強い思いも持っています。
「大学日本代表の時、アメリカでプレーしましたが、文化の違う国で投げること、外国のパワーのある選手と対戦することは、いつもと違う緊張感がありました。国を背負って戦うプレッシャーもありますが、そういう中で自分の力を試してみたいと思っています」
既に来季を見据えていますが、休日は友人と自然豊かな場所に行くなど、息抜きも大事にしています。新たに、ゴルフにも挑戦してみたいそうです。
「一度もやったことがないんです。外崎さんが上手いと聞いているので、弟子入りしたいと思います。あとは、オフに入ってからは私服でのインタビューが多くて、発売されるのをドキドキしながら待っています。また、スタイリストさんが準備してくださった衣装を着たときは、いつもとは違った自分の姿をみて、不思議な気持ちになったりと、刺激の多い日々を過ごしています」。
夢だったプロ野球人生は、まだ始まったばかり。最優秀新人賞のタイトルを自信にして、2年目はさらに飛躍をしてくれることを願っています。