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ブルペン陣を支える青木勇人投手コーチ。今でも大切にしている“準備と傾聴”

こんにちは。

株式会社西武ライオンズ広報部です。

ゴールデンウィーク最終日となりましたね。ベルーナドームでは5試合が行われました。多くのお客さまにご来場いただき、得点時には多くのフラッグが波打って圧巻の景色でした。
そんなライオンズの定番応援スタイルである「フラッグ応援」については先週の記事をチェックしてみてください。

今回は、観客席ではなくグラウンドに目を向けてみましょう。
12球団の本拠地球場では珍しく、観客席からブルペンが見えるベルーナドーム。
今回はブルペン担当の青木勇人投手コーチについてお話します。

ちなみに一軍には豊田清投手コーチもいますが、豊田コーチはマウンドに立つ投手のフォローや、投手交代などが試合中の主な役割です。
ではブルペン担当とは簡単に言うと…、としたいところですが、青木コーチ自身も「んー難しいね!笑」と言ってしまうほど、細かい仕事が多岐にわたります。


練習前の集合の様子

当日の継投プランは練習前の集合で投手陣全員に伝えられますが、相手打線に合わせて組んだものでも、その投手のコンディションが必ずしも良いとは限りません。
試合展開を読み、投手のコンディションを見て体を温め始めるタイミングを伝え、スムーズに試合に入っていけるように準備をさせる。加えて継投プランを複数用意しておくことや、プランにない選手にも声掛けをするなど、そこに至るまでの観察力や選手とのコミュニケーションが青木コーチの言う“難しい!”ところ。

豊田清投手コーチと二人三脚でライオンズの投手陣を支えている青木勇人とは。


■コーチ2人の共有意識

豊田コーチと青木コーチがタッグを組み始めたのは2022年から。
その初めての春季キャンプで、投手を含めたミーティングをしたときのことです。

青木コーチが選手たちに伝えたいことをノートに書き、ミーティング会場に行くと、豊田コーチから、まずは選手たちにこれを伝えたいとメモを渡されます。
そのメモには“準備”という二文字が記されていて、なんと青木コーチのノートに書いてあるものと同じでした。もちろん事前のすり合わせなどはありません。

「驚いたけど、うれしい気持ちになったのを覚えてる。3年目の今でも大事にしているけれど、登板直前の準備だけでなく、試合の前日から。睡眠そして日常の食事もすべてが準備だと選手たちに言っているよ」。

その“準備”は選手だけでなく、コーチも同じ。
ブルペンを任される青木コーチは選手が最高のコンディションでマウンドに上がれるように、普段からのコミュニケーションを欠かしません。

■選手との信頼を築く

試合の日、青木コーチは選手よりも少し早い時間からグラウンドに姿を現します。
選手たちのアップが始まると、キャッチボールを見ては球のキレを、ランニングでは体の動きを確認し、ブルペンに入る選手がいれば付いていくことも。
この時間は選手との会話もほどほどに“観察”に時間を費やし、試合に備えます。


コミュニケーションをとる青木コーチ

試合開始直後は、野球の話はもちろん、食事や睡眠などの準備に関する雑談をしながら、先発投手を見守り、試合が中盤から後半に進むにつれ豊田コーチからの電話の回数が増えてくるころ、中継ぎ投手にストレッチやキャッチボールを促します。

「豊田コーチからは、中継映像でみたときの先発投手の球はどうなのかと聞かれることもある。ベンチから直接球をみていたとしても見落とすものもあるから。スタッフも含めた色々な人の視点からみて、交代のタイミングを判断しているんだよね」。

そして出番が来た選手へは、緊張感ある言葉をかける選手もいれば、リラックスできる言葉をかけて送り出す選手とさまざまです。

「中継ぎ投手はどうしても緊張するんだけど、ある程度の緊張はした方が良いと思う。でも緊張感は長く続かないから、それ以外のところでは選手の素顔が見えるような他愛もない話をしてるね。選手を知ることで、アドバイスの仕方も変わると思うし、そこは大事にしているところ。やはり心を開いてくれないと、コーチの意見は響かないと思うから、ビシッとお尻を叩くような言葉をかける選手もいれば、プレッシャーを与えない方が良い選手など、その会話の中から性格を探るようにしているよ。それが正解かどうかはわからないけど、なるべく気持ちを伝えることができたらいいなと」。

多くの選手の心身のコンディションを観察し、登板にむけて準備を整えます。もちろん、自信をもって送り出しますが「本当に、本当に、選手たちが投げ終わるまでは心配が尽きないんだよ。自分が選手でいる立場のほうが、楽だね」なんて本音も。

そして、もっと成長できると思う選手たちだからこその葛藤もあるといいます。

■選手の成長のための判断

一軍にいる投手は、結果を出しながら成長していかなければなりません。
登板後の課題を翌日からの練習で改善しようとしますが、練習をし過ぎてしまうと疲労が残り、その日の登板に影響するかもしれない。そんなときは練習量を調整しなければなりません。
課題が改善されないまま、悩みや不安を抱えてマウンドに上がるのが良いのか。練習して疲労を残した状態で投げるのか。これは本人にとっても難しい課題であり、青木コーチ自身も現役時代は葛藤したそうです。

「2軍は打たれて学ぶこともありますが、1軍は勝つことが絶対的な使命。課題と練習量を天秤にかけたとき、毎回本当に悩みどころ。1軍で課題をクリアにしてほしいけども、できなければ本人にしっかり現実を知ってもらい、1軍登録を抹消して2軍で取り組んでもらうしかない。1軍にいながらも、自分で課題に気が付いて修正できるというのが理想だけど、そうでない選手もいるからね。結果を求められる立場だからこそ、選手たちの葛藤もわかってはいるけれど、もっと成長できると思うし、成長してくれないと困るよ!というのが本音かな」。

試合に勝つことと選手の成長の間で、自分自身も葛藤の日々だという青木コーチ。
さまざまな感情が生まれるなか、自身の感情のコントロールも難しかったそうです。

■自分自身の変化

その変化のキッカケになったのは2020年にライオンズのコーチに就任して受けた研修でした。約90分の座学研修で、指導者育成を目的として2020年から年に数回行っているものです。

その研修で、自分を押し通すのではなく相手の話や気持ちに耳を傾ける“傾聴”の大切さを知り、それからは一呼吸置いてから発言することを心掛けていきました。
そうすると、自分の感情をコントロールできるようになり、どんな試合でも冷静さを保ち、選手たちを見守る余裕が生まれたといいます。
コーチになった今でも自身の現役時代と重なるものは多く、選手の気持ちがわかるからこそ、傾聴を心がけ最高の準備で投手陣をサポートしています。

また、選手同士の関係性も見ているというから驚きです。
「仲が良いのはいいことだけど、お前らライバルだからな?って言うときもあるよ笑」と、ニヤけながら話してくれました。

■バッテリーで試合を作って勝ちたい

今月1日、チームは今シーズン初のサヨナラ勝ちをおさめました。

9回裏2アウトの場面、青木コーチのいるブルペンでは延長戦に備え、万全の準備を整えていました。そうしたなか、若林選手が連敗脱出を決めるホームランを放つと、ブルペン陣も歓喜の渦に包まれました。

延長戦が多く、勝ちきれない今季。この状況について青木コーチは語ります。
「開幕後、先発陣が良い形で試合を作っていましたが、4月後半は中継ぎ陣が試合を壊してしまっていました。延長の試合でも勝つことができず、最後まで手を叩き、飛び跳ねて、大声で我々を鼓舞し応援してくださるファンの皆さんをガッカリさせてしまっている。本当に心苦しいよ。でも1試合でも多くバッテリーで試合を作って勝ちたい気持ちは揺るがないし、勝利後の波打つフラッグは何度見ても鳥肌が立つんだよね。これまでは1歩引いて見ていることも大事にしていたけど、もう少し自分も積極的に選手やチームに向き合って、泥臭く、どん欲に勝利を勝ち取りたい」。


練習前には野手陣ともコミュニケーションをとる青木コーチ

今回はブルペン陣の指揮を執る青木コーチの話題をお伝えしました。ベルーナドームへお越しの際はぜひブルペンにも注目してみてくださいね。

青木コーチは正直なところ、とても目立つ風貌ではありませんが、人懐っこいというか、水上投手に似たところがあるように感じます。普段は冷静に、でも内に秘めた熱い思いは人一倍。ブルペンではファイルを片手に受話器の前に立っているので、ぜひ見つけてみてください。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
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