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たとえプロ野球選手の夢は叶わなくても。球団本部バイオメカニクス担当 加藤拓光だから伝えられること

こんにちは。西武ライオンズ広報部です。

前回の投稿では、球団公式パフォーマー「bluelegends」のパフォーマンスを支えるディレクターYukiのお話をさせていただきましたが、たくさんの反響をいただきありがとうございました!
まだ読んでいないという方は、ぜひ以下からお楽しみください!

今回は、選手のパフォーマンスを支えるスタッフのひとり、球団本部バイオメカニクス担当の加藤拓光さんのお話です。

“バイオメカニクス担当”と言われてもあまり馴染みのない仕事かもしれません。
その仕事を一言で言うと、選手に関するさまざまなデータや映像を集めて、その動作解析を行い、技術向上のためにアドバイスを送るといったところです。

さまざまな情報がチームや選手を取り巻き、データ全盛とも言える現代野球において、データの重要性は言わずもがな。
データをどれだけ活用できるかは、選手やチームの成績に直結していると言っても過言ではありません。

そんなライオンズのデータ活用を支えるバイオメカニクス担当。
今シーズンからその一員になった新米バイオメカニクス担当の加藤さんには、大きな困難を乗り越えた過去と今の仕事への強い思いがありました。


■誰よりも今の仕事を楽しむ

「加藤!とか、加藤くん!って呼んでも返事してくれへんねん。
ちゃんと、“たくみくん”って呼ばへんと!(笑)おもろい子やなあ!」

高知県高知市春野町で行われているB班春季キャンプで西口文也ファーム監督は、加藤さんについての印象を尋ねるとそう教えてくれました。

人懐っこい性格で、コミュニケーション能力も抜群。
24才という若手ながら物怖じせず、早速チームにも溶け込んでいます。

新入団スタッフとは思えないほどにチームに馴染む加藤さん

今はワクワクが100%で、不安は0%。毎日が勉強ですが、今この仕事をできていることが、本当に本当に楽しいんです!

新たな仕事への期待に目を輝かせる加藤さんには大きな困難を乗り越え、この仕事にたどり着いた過去がありました。

■選手としての夢は断たれても

地元の札幌旭丘高校で野球部の練習に打ち込み、多くの野球少年と同じように将来はプロ野球選手を目指していた加藤さん。
しかし、高校1年生の秋に彼を病魔が襲います。

「起立性調節障害」

自律神経の働きが悪くなり、起立時に身体や脳への血流が低下する病気で、朝なかなか起きることができない、食欲不振、全身の倦怠感、頭痛、立ちくらみなどさまざまな症状が起きるそうです。

加藤さんも慢性的に頭痛やめまいがあり、とにかく朝起きることができないという症状が強く現れました。
大好きだった野球がプレーできない。
思うように学校に通うこともできない。
突然現れた大きな壁に、加藤さんの野球選手としての夢は阻まれてしまいました。

しかし、それでも加藤さんは新しい目標に向かって、前を向きます。
たとえプレイヤーとしての夢は叶わなくても、「野球が大好きだ」という強い思いから、違う形でプロ野球選手を支える仕事を目指しました。

進学した北海学園大学ではもともと興味があったデータや映像解析のノウハウを身に着け、同大学野球部初の“アナリスト”に就任。データ分析などでチームの勝利に貢献しました。

大学野球部での活躍ぶりが球団関係者の目に留まり、2024年から西武ライオンズのバイオメカニクス担当として採用が決定。採用の決め手について、球団本部チーム統括部長の市川徹さんは、
「まず、履歴書の写真が良かった!というのが第一印象です。キリっとした表情に惹かれましたね。オンラインでの面談で話をしていく中でも、自分がこれまで積み重ねてきたことに自信を持っていることもうかがえました。将来のビジョンもしっかりしていましたし、データや映像の分析だけでなく、選手たちと対話を重ねながら一緒に課題を見つけていきたいという姿勢にも、彼の本気度を感じました。
と彼の人柄にも好感を持ったとのことです。

加藤さんは、プロ野球球団に入団するという第二の夢を叶えたのでした。

パソコンを前にキリッとした表情の加藤さん

■加藤さんだから伝えられること

大きな困難を乗り越え、今ライオンズの一員となった加藤さん。
彼だからこそ伝えられることがあります。

私事で恐縮ですが、実は本記事の筆者にも起立性調節障害を抱える小学生のこどもがおり、彼の話は、彼が明るく語る以上に困難な道であったと想像することができました。

加藤さんにこどもの話をすると、
「当時は僕も本当に朝起きられなくて、食欲もなくて。でもがんばって、毎朝お味噌汁だけは飲むようにしたんです。それが効果あったんですかね~」

加藤さんの話を聞いたこどもは、翌日起床後に、1人でキッチンに向かいお味噌汁を作っていました。加藤さんのようになりたいと語るこどもの姿を見ると、彼だからこそ伝えられることがあると感じました。

「起立性調節障害に限らず、さまざまな理由でプロ野球選手の夢を諦めた方ってたくさんいると思います。でも、僕みたいなバイオメカニクス担当とか、その他にもライオンズではたくさんの方が仕事をしていて、みんなで優勝を目指して戦っています」

自身と同じような経験をする人へも自身の活躍で勇気を与えていきたいという加藤さんは、さらなる成長を誓います。

春季キャンプ中の加藤さん「やる獅かない」のスローガンとともに

「どんな方であっても、ライオンズの優勝のために一緒にがんばることができるんだということを、たくさんの方に伝えられるのであれば、これ以上の喜びはありません!
そのためにも、まずはひとりのバイオメカニクス担当として、精一杯がんばりますよ!」

大きな困難を乗り越え、そう笑顔で語る加藤さんには、必ずやライオンズの勝利に貢献してくれると思わせる力強さと魅力があります。
選手だけではない、ライオンズの大きな新戦力の活躍に期待が膨らみます。