新入団選手の里親 ~若獅子寮の寮長の存在とは?~
新年明けましておめでとうございます!今年もライオンズ公式noteをよろしくお願いいたします。年が明けると、2月の春季キャンプまで、もう間もなくという感じがしますが、1月の恒例行事としては、新入団選手たちの入寮、合同自主トレがありますよね。
本日6日、いよいよ新入団選手たちの入寮が始まりました。
期待に胸を膨らませ、プロ野球選手としての新生活の拠点となるのが「若獅子寮」です。普段、若獅子寮には4人のスタッフが寮長として交代で勤務し、寮生たちを見守っています。寮生にとって欠かせない存在であり、里親と言ってもいい存在なのが寮長たち。
今回は、若獅子寮を支える2人のスタッフに話を聞きました。
寮長の業務内容
若獅子寮の業務には、どんな仕事があるのでしょうか?
ライオンズでは寮の業務を4人で行っています。
朝から夕方まで寮で勤務をする日勤から、夕方ごろから翌朝まで勤務をする夜勤と、大体1日2交代制で担当しています。一日の仕事は、早朝5時ごろからお風呂のお湯を張り、寮の各入り口を開錠するところから始まります。朝刊やスポーツ紙を食堂に並べ、ベルーナドームの冷蔵庫に飲み物を準備。7時から朝食の時間が始まり、まだ食べに来ていない選手がいると、それぞれの部屋まで様子を見に行きます。プロ野球選手としての体づくりのため、朝食はとても大切だからです。日中は選手宛に届いた荷物の受け取りや、一軍の試合日はベルーナドームの食事運搬、寮周辺の巡回などさまざまな業務を行います。
寮の門限は23時。
戸締りをして、お風呂の整理を行った後、仮眠をとります。夜勤のときは「何かあったときに起きないといけないから」と、眠りは自然と浅くなるそうです。寮生から手続き関連の質問があれば、教えながら一緒に対応をしたり、退寮の時期になると引っ越し準備などの相談に乗ることも多いそうです。
若獅子寮寮長は一体どんな人?
若獅子寮の寮長を務めるのは、球団本部に所属する岡田佳彦さん。寮長としては5年目のシーズンを迎えます。
岡田さんがライオンズに入社したのは25才のとき。高校卒業後は6年間西武鉄道のアイスホッケー部で選手として活動をしていました。選手を引退後、ライオンズに入社し、管理部(現球団本部)でチームに関する業務を行っていました。2004年にライオンズの春季キャンプ地を宮崎県日南市南郷町に移転した際には、南郷でプロ野球のキャンプができるよう数々の環境整備に携わり、尽力しました。その後も、チーム関連の業務を中心に行い、コンプライアンス部を経て、寮長に就任する前の6年間は広報部にも所属し、チームに帯同してメディア対応業務なども行っていました。
寮生と関わるうえで、どんな存在でいたいのか。
岡田さんに聞いてみました。
「頼られたら、まずはちゃんと答えるし教えてあげられることは教えます。甘やかすとはまた違うけれど、選手からしたら里親みたいな存在ですからね」。
地元を離れ、初めて親元を離れる選手もいます。慣れないプロ野球の世界で生活していく選手にとって、寮長は私生活を支えてくれる大切な存在なのです。
「初めて一軍に呼ばれていく選手は、本当にうれしそうなんですよ。がんばってこいよ!っなんて声をかけて送り出します」。
初勝利や初ヒットを記録した選手たちには、「おめでとう!」と一緒に喜びます。「そうすると選手はとってもうれしそうにしますね。グータッチとかして」。
寮生の活躍は心から嬉しいと話す岡田さん。この仕事でいちばんやりがいを感じる瞬間でもあるそうです。
「4年間見てきましたが、ライオンズの寮生たちは本当にいい子たちばかりですよ。門限を破るとかルールを守らないとか、そんな子はひとりもいません。」
そんな岡田さんに、いちばん思い出に残っているエピソードを聞いてみました。
コロナ禍での寮長就任。寮が少しでも憩いの場になるよう工夫を
岡田さんが寮長に就任したときは、まさに新型コロナウイルスが猛威を振るう最中でした。
寮生も外出制限が厳しく、買い物に行くといっても付近のコンビニエンスストアやドラッグストアのみに限られていました。
もちろん外食もできず、寮での食事も黙食。選手同士の部屋の行き来も制限されていたため、当時は寮の部屋に閉じ込められているような生活だったといいます。
シーズンは開幕し、野球をすることはできましたが、寮生を見ていると本当にかわいそうだったと当時を振り返ります。
そうしたなか、少しでも明るい気分になって欲しいという想いを込めて、ある企画を考えました。
週に一回寮のお風呂に「ゆ」と書かれた温泉風のれんを設置し、お湯には各地の温泉気分を味わえる入浴剤を入れ、「温泉デー」を開始したのです。
すると寮生からは大好評。これは今でも続いているそうです。
ライオンズに入社し40年が経つ岡田さんは、実は退職まであと1年。実感はなく今後のことはまだわからないが、体が元気なうちはライオンズに携わりたいと話します。
「何より、ライオンズにいて優勝・日本一を何度も経験させてもらったことを心から感謝しています。本当に特別な経験をさせてもらいました」
寮長生活28年、副寮長とは?
寮長の岡田さんとともに若い選手たちを支えているのが、副寮長の上中吉成さんです。
上中さんは高校卒業後、外野手としてライオンズに入団しました。引退後に寮の業務に就き、28年もの月日が経ちました。
寮生と関わるうえで、気をつけていることは?
「父親みたいな存在になるんでしょうかね。寮をとにかく居心地のよい空間にしたいと思っています。試合でミスをして帰ってきた選手には、冗談を言い合うこともあれば全く触れないようにすることもあります。選手個人個人の性格に応じてそこは変えていますね。」
寮で生活する選手にはそれぞれ個性があり、それらを理解したうえでの声かけをするよう心がけているそうです。
「親のような存在だからこそ、言いにくいことも伝えていかなくてはいけないです。甘えてくるような子もいますけど、そこは心を鬼にしてというか」。
寮生に聞いてみました。
2024年に入寮した、金子功児選手。
「僕は親元を離れて暮らすのが初めてなので、私生活でわからないことはよく聞いちゃいますね。すぐに教えてくれるし一緒に対応してくれたりするのでとても助かります。」
上中さん「この間、金子選手の地元の湘南のたこせんべいをお土産でもらいました」
金子選手「いつもお世話になっているので!笑」
私たち広報部員が選手の取材対応や撮影対応で寮に出向くと、寮生と親しげに会話をする様子が印象的です。こうしたコミュニケーションが日々の関係性を作っているのだなと感じます。
プロ野球選手だった経験から、選手に聞かれることもあるのでは?
「僕個人の野球の話は・・・まぁ・・・そんなに聞かれないですよ。技術の話などはしませんが、寮にいて歴代いろんな選手を見てきましたから、聞かれたら自分が話せる範囲で答えたりはしますよ」。
もちろん、監督やコーチがいるので技術的なアドバイスはしないといいますが、歴代の先輩たちはどんな寮生活を送っていたのか?という質問はよくされるので答えられる範囲で教えるといいます。
上中さんは、現在チーム最年長の栗山巧選手と中村剛也選手が寮生だった頃も見てきました。
「ふたりとも今と変わらないです。栗山選手なんかは寮のときから自分に厳しかったし、二軍にいるときは一軍の試合がテレビでやっているなか室内練習場で打ち込んでいましたよ 」。
そんな上中さんが、副寮長として働くなかでいちばんうれしいと思う瞬間は、岡田さんと同じく若い選手の活躍だといいます。今シーズンだと菅井信也投手や奥村光一選手の支配下登録はとてもうれしかったと目を細めます。
退寮した選手たちともコミュニケーションをとっていますよね?
「練習施設や寮で会った際はけっこう話しますね。私生活の話や、今選手が思っていることや考えていることを話してくれたりします。ふざけて絡んでくるような選手もいますけど、みんな寮を出てひとり暮らしになると話し相手がいなかったりするのでいろいろ会話したくなることもあるのかな・・・」。
選手たちにとっても寮生時代を思い出し、少し甘えられるような時間なのかもしれません。
寮長の業務で、一番大変なのは?
ふたりが口をそろえて言っていたのが、毎年入寮してくる選手たちの顔と名前を覚えるのがいちばん大変だということ。
「1月に入寮してきますよね。研修や合同自主トレなどもあって、やっと覚えてきたかなというところで今度は春季キャンプに行ってしまうでしょう。そうすると、日焼けして帰ってきたり髪型が変わって帰ってきたり、また最初から覚えなきゃ・・・となるんですよ(笑)」
もちろん、長く携わっているだけあってすぐに一人ひとりの特徴を覚えていくのでしょうが、入寮から数日はプロフィール写真や資料とにらめっこをする日々なのだとか!
2025シーズンは、14人の新入団選手が入寮します。14人を預かり、立派なプロ野球選手になるための新生活がスタートしていきます。選手たちが野球以外の多くの時間を過ごすこの場所で、今日も寮長たちはルーキー選手を笑顔で迎えています。